心も体も、寒いなら抱いてやる
全然納得できない。父のことが好きだった分、腹立ちが募った。

「そうなんだけど―――」

「わかった。もういい。お父さんなんてもういらない」

駄々っ子のような言葉を吐きながら、みのりはまた母の前で父に電話をかける。

すぐに「もしもし」という声が聞こえた。いつものように。

「今お母さんから事情を聞いた。自由に目覚めちゃって、家族なんていらなくなったんだって? だから離婚するんだって? おとうさんにとって家族って、私たちって、そんなもんだったんだ。がっかりだよ。私、お父さんみたいな人と結婚したいとか思ってたのにバカみたい。結婚しても結婚式には呼ばないからね。お父さんとバージンロード歩けなくて残念だけどしょうがないね、さよなら」

興奮して言わなくていいことまで一方的にまくしたてて電話を切った。

頭にきすぎて、哀しすぎて、混乱して、みのりはもう一度説明を試みようとしている母を無視して自分の部屋に駆け込んだ。

大好きなお父さんが単身赴任のまま、家族から抜けてしまうのだ。

それは突然すぎて、もう少し冷静に話を受け止めなければいけないと頭ではわかっていても、気持ちは制御不能に陥っていた。
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