琥珀の記憶 雨の痛み
「あれっ、2人ももう帰るの?」

小さないたずらっ子みたいに顔を崩してしぃーっと人差し指を立てた尚吾くんに続いて、こっそりその場を離れようとしたところをあえなく見つかった。


声をかけてきたのはアツシだ。
ナツだったら、私の心は折れていたと思う。
ううん、今の一言でナツにも気付かれたと思った時点で、浮ついた心はあっけなく折れた。


やっぱり、後ろめたい。
ナツにも声をかけないと。
2人で、と言ってくれた尚吾くんの気持ちは裏切ることになるけど、でも。

ちらりと彼の顔を窺った。
こっそり抜け出そうとしたのがバレたにも拘らず、彼は平然と笑ってこう言った。

「原付取りに行ってくるだけ」


――え。
嘘まで、吐いちゃうの?

動揺した。
一瞬こっちを窺った、ナツの顔が見れなかった。


「行こ、莉緒」

私が言葉を失ってる間にそう言って背中を押してきた尚吾くんに、無意識に従うように足が動いていた。


「莉緒さん」

と、彩乃ちゃんがおずおずと声を発した。
仲介者の私がこの場から離れるのが不安だったのかもしれない。

そのまま話してていいよ、という意味で目配せすると、通じたのか、彼女も肩の力が抜けたみたいに微笑んだ。


尚吾くんが、少し強引に駐輪場の方へ促す。
結局私は、ナツに何も言えないままそこを離れた。
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