琥珀の記憶 雨の痛み
みんなに嘘を吐いたまま、黙って帰ることを私が気にしていると思ったんだろう。
彼はその場でアツシに電話して、「やっぱこのまま先に帰るわ」と告げた。
ケータイから漏れるアツシの声が、何やら不満を訴えたようだった。
それを遮るようにして、尚吾くんが口にした取って付けたような理由は……。
「莉緒が醤油買いに行かないとって言うから、この時間でも開いてる醤油売ってそうな店探しながら帰る」
思わず吹き出しそうになった私を、心なしかドヤ顔で彼は面白そうに見つめていた。
どうやら醤油ネタのおかげで話は付いたようで、そのまま電話を切ろうとした彼に慌てて手を伸ばした。
「ごめん、ちょっと!」
首を傾げながら差し出してくれた尚吾くんから、携帯を受け取る。
耳に寄せると彼の温もりが残っていて、無駄に心臓が跳ねた。
ちょっと……もう。
どうしようもない自分に呆れつつ、漏れそうなため息は何とか抑え込む。
ギリギリ通話は切れていなくて、呼びかけるとアツシが応えた。
「アツシ? ごめん、彩乃ちゃんよろしく。私このまま帰っちゃうけど、彼女……」
ああ、と、電話の向こうでアツシが笑った。
『無理やり夜遊びに連れまわしたりしないから、安心して』
多分向こうでは会話を彩乃ちゃんも聞いているんだろう。
わざと冗談めかしてそう言ったアツシや周りに、このまま任せて大丈夫そうでホッとする。
このところずっと尚吾くんと一緒に帰っていたナツにごめんと伝言を頼むことは――、出来なかった。
彼はその場でアツシに電話して、「やっぱこのまま先に帰るわ」と告げた。
ケータイから漏れるアツシの声が、何やら不満を訴えたようだった。
それを遮るようにして、尚吾くんが口にした取って付けたような理由は……。
「莉緒が醤油買いに行かないとって言うから、この時間でも開いてる醤油売ってそうな店探しながら帰る」
思わず吹き出しそうになった私を、心なしかドヤ顔で彼は面白そうに見つめていた。
どうやら醤油ネタのおかげで話は付いたようで、そのまま電話を切ろうとした彼に慌てて手を伸ばした。
「ごめん、ちょっと!」
首を傾げながら差し出してくれた尚吾くんから、携帯を受け取る。
耳に寄せると彼の温もりが残っていて、無駄に心臓が跳ねた。
ちょっと……もう。
どうしようもない自分に呆れつつ、漏れそうなため息は何とか抑え込む。
ギリギリ通話は切れていなくて、呼びかけるとアツシが応えた。
「アツシ? ごめん、彩乃ちゃんよろしく。私このまま帰っちゃうけど、彼女……」
ああ、と、電話の向こうでアツシが笑った。
『無理やり夜遊びに連れまわしたりしないから、安心して』
多分向こうでは会話を彩乃ちゃんも聞いているんだろう。
わざと冗談めかしてそう言ったアツシや周りに、このまま任せて大丈夫そうでホッとする。
このところずっと尚吾くんと一緒に帰っていたナツにごめんと伝言を頼むことは――、出来なかった。