琥珀の記憶 雨の痛み
「莉緒、しっかりしてるな。良い先輩だね」

携帯を返す時、尚吾くんがそう言った。


そんなことない。

本当はもっと早くにみんなと彩乃ちゃんを引き合わせるべきだったし、仕事の教え方も、多分下手くそだ。
沢山の新人を教えてきた社員さんやベテランのパートさんたちに教わった方が、きっと彼女のためになる。

あとでフォローしよう、と思っていたのに、ユウくんやみんなの喫煙のことも結局言えないままで、ほったらかしにしてこのまま帰ってしまおうとしているのに。

それに――。


「ユウくんには、馬鹿にされたけど……。後輩出来た途端に張り切っちゃってて変だって」


言われたことを思い出すと、自然と眉間に力が入って唇が尖った。

悔しいけれど、多分それも、ユウくんが言うところの『上から目線』になるんだ。

偉そう、だったのかな。
私、彩乃ちゃんって後輩が出来てから、もしかして調子に乗ってた?


尚吾くんは無言で原付を押した。
慌てて彼に続く私は、何となく隣を避けて、斜め後ろにつく。

駐輪場からファーストフードの前を抜け、バス通りに出たところで彼が呟いた。


「やっぱり、なんか――、仲良くなってるよね、2人」

「え……、違っ!」

なんで今のでそう取られるのか分からない。
慌てて否定しようとした言葉に、被せるように彼は続けた。


「や、見てれば分かるよ。遠慮がなくなったって言うか――、なんか、対等になった感じ」
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