琥珀の記憶 雨の痛み
「俺さー、このところナツと帰ってたじゃん?」
急に口調を変えて、軽い調子で尚吾くんがそう言ったのは、話の流れや空気を変えようとしてくれたのだと思う、けど。
彼の口から突然出てきたナツの名は、私の心臓を叩いた。
動揺を悟られないように、傘の柄をぎゅっと握りしめて堪えた。
「最近莉緒に避けられてる気がするって、ナツに泣きついちゃった」
「え、ええっ!?」
照れたように笑いながら言ったそれは、彼にとっては多分冗談、のつもりなのだ。
けど、私にとっては笑えない話で、どんな顔して良いのかも分からない。
「ご、ごめん。そんなに気にしてたなんて……避ける、とか、別にそういうつもりじゃ」
――いや、実際避けてたんだ。
説得力ゼロだし。
彼は苦笑しながら、私のヘタクソな言い訳のツッコミどころはスルーしてくれた。
心臓が、バクバクと鳴る。
心地良くない緊張感だった。
背中がやけに冷たいのは、霧で濡れたせいなのか、変な汗でもかいたのか。
ふるりと身震いが起こって、なす術もなくそれが去るのをやり過ごした。
尚吾くんにそんなことを言われて、ナツはその時、一体どう思ったのだろう。
「そしたらナツが」
ナツの名前に反応してまた、ひと際大きく心臓が鳴った。
内側から殴るように暴れた一拍が、痛い。
急に口調を変えて、軽い調子で尚吾くんがそう言ったのは、話の流れや空気を変えようとしてくれたのだと思う、けど。
彼の口から突然出てきたナツの名は、私の心臓を叩いた。
動揺を悟られないように、傘の柄をぎゅっと握りしめて堪えた。
「最近莉緒に避けられてる気がするって、ナツに泣きついちゃった」
「え、ええっ!?」
照れたように笑いながら言ったそれは、彼にとっては多分冗談、のつもりなのだ。
けど、私にとっては笑えない話で、どんな顔して良いのかも分からない。
「ご、ごめん。そんなに気にしてたなんて……避ける、とか、別にそういうつもりじゃ」
――いや、実際避けてたんだ。
説得力ゼロだし。
彼は苦笑しながら、私のヘタクソな言い訳のツッコミどころはスルーしてくれた。
心臓が、バクバクと鳴る。
心地良くない緊張感だった。
背中がやけに冷たいのは、霧で濡れたせいなのか、変な汗でもかいたのか。
ふるりと身震いが起こって、なす術もなくそれが去るのをやり過ごした。
尚吾くんにそんなことを言われて、ナツはその時、一体どう思ったのだろう。
「そしたらナツが」
ナツの名前に反応してまた、ひと際大きく心臓が鳴った。
内側から殴るように暴れた一拍が、痛い。