琥珀の記憶 雨の痛み
電車は次の駅へ向けて出発した。

少しすると何人か降りてきた人たちが改札を抜けて出てきて、その踏切を渡って家路を急いでいく。


小学生くらいの子どもを真ん中に挟んで、手を繋いだ親子。
女の子は興奮した様子ではしゃぎながら何度も両親の顔を見上げた。
遊園地にでも行ってきた帰りなのかな。

心なしか気まずそうにその隣を追い抜いて行った若い男性は仕事帰りのようだった。
疲れて早く家に帰りたいからなのか、それとも楽しそうな家族の団らんを邪魔したくないからか、妙に速足で。


その人達の姿も見えなくなった頃に、私たちは漸く踏切に辿り着いた。
踏み切りの警報音も電車の音もホームのアナウンスも家路を急ぐ人の気配も去った後のそこは、とても静かだった。


その静寂を待っていたかのようなタイミングで、尚吾くんは口を開いた。


「それで莉緒は、なんで俺のこと避けてたの?」


――外から見ている時にはあんなに綺麗だったオレンジの一角に足を踏み入れたのに、その絵の一部となった自分たちの姿は、自分では見えない。


避けてたわけじゃない、なんてバレバレの誤魔化しを、彼は見逃してくれたのかなと思ってたけど。
どうやらそうでは、ないらしい。

やけに穏やかな顔で紡がれた彼の質問には、怒ってるとか傷付けられたとか、私を責めるニュアンスはなかった。


「ごめん、答えづらいよな。質問変えるわ。イエスかノーで答えられるヤツにするから、言えないことは喋らなくていいよ」


まるで――、本当の理由を、知っていて聞いてきているかのようだった。
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