琥珀の記憶 雨の痛み
「今日、ホントに醤油買いに行く?」
身構えた私に気付いてほぐそうとしてくれてるんだろう。
彼の最初の質問に、私は思わず笑った。
「行かないよ。分かってるんでしょ? 嘘だよ」
「あ、喋んなくていいって言ったのに」
ふふっと微かに肩を揺らして笑いながら、尚吾くんは言った。
「え、ずっとなの?」
「だって、急に黙られても困るし。縦か横に首振っててよ」
何ソレ、と反論しようとして、やめた。
最初だからこの質問だ。
きっと口に出しては答えられない質問を、彼は用意している。
「やり直し」とふざけた調子でもう一度同じ質問を繰り返されて、私は求められた通りに首を横に振って答えた。
なんだかゲームみたいで、可笑しい。
そういう空気を作ってくれる彼は、やっぱり優しい。
「すぐ分かったよ、嘘だって。名前呼ぼうとしてくれたんでしょ、俺の」
質問なんだか確認なんだかよく分からないトーンだった。
けど、答えを促すみたいに首を傾げて私の顔を見てくるから。
頷いた。頷いて、しまった。
嬉しそうに目を細めた彼から、堪らずに目を逸らした。
「さっき――2人になった後は、うっかり名前で呼んでたもんね」
と、にやにやしながらからかうように言われたこれは、質問じゃないから。
カアッと自分の顔が熱くなったのは分かったけど、その色を隠すようにして、黙って俯いた。
「うっかり出るってことは、莉緒の頭の中ではもう俺名前で呼ばれてるんだよね」
キリキリと、少しずつ、身体の内側が痛くなってきた。
目にかかる前髪の隙間からこっそりと表情を窺うと、彼はどこか期待を孕んだような目で、私が答えるのを待ってる。
また。こくりと、首が縦に振られていた。
身構えた私に気付いてほぐそうとしてくれてるんだろう。
彼の最初の質問に、私は思わず笑った。
「行かないよ。分かってるんでしょ? 嘘だよ」
「あ、喋んなくていいって言ったのに」
ふふっと微かに肩を揺らして笑いながら、尚吾くんは言った。
「え、ずっとなの?」
「だって、急に黙られても困るし。縦か横に首振っててよ」
何ソレ、と反論しようとして、やめた。
最初だからこの質問だ。
きっと口に出しては答えられない質問を、彼は用意している。
「やり直し」とふざけた調子でもう一度同じ質問を繰り返されて、私は求められた通りに首を横に振って答えた。
なんだかゲームみたいで、可笑しい。
そういう空気を作ってくれる彼は、やっぱり優しい。
「すぐ分かったよ、嘘だって。名前呼ぼうとしてくれたんでしょ、俺の」
質問なんだか確認なんだかよく分からないトーンだった。
けど、答えを促すみたいに首を傾げて私の顔を見てくるから。
頷いた。頷いて、しまった。
嬉しそうに目を細めた彼から、堪らずに目を逸らした。
「さっき――2人になった後は、うっかり名前で呼んでたもんね」
と、にやにやしながらからかうように言われたこれは、質問じゃないから。
カアッと自分の顔が熱くなったのは分かったけど、その色を隠すようにして、黙って俯いた。
「うっかり出るってことは、莉緒の頭の中ではもう俺名前で呼ばれてるんだよね」
キリキリと、少しずつ、身体の内側が痛くなってきた。
目にかかる前髪の隙間からこっそりと表情を窺うと、彼はどこか期待を孕んだような目で、私が答えるのを待ってる。
また。こくりと、首が縦に振られていた。