琥珀の記憶 雨の痛み
「やっぱ、そうなんだ」

「まだ答えてない!」

1人で勝手に納得したように小さく呟かれて慌てて否定すると、また彼は「また喋った!」と笑って空気を軽くしようとする。

「だーめ、もう時間切れ。次の質問ー」

おどけた調子で、こうやって。


痛い。痛い。
彼のそういう優しさも、どこまで分かっててどんな思いで質問を繰り返すのか考えるのも、自分の狡さも、全部痛かった。


「俺ね、それがユウなんだと思い込んでた。けど、違うんだよね? それは――」


言葉を一旦そこで区切った尚吾くんは、じっとこちらを見つめていて。
私が首を振って知らせるイエスかノーではなく、私の目の中に、答えを探してるみたいだった。

逃げたい。
のに、視線を逸らすことが、出来ない。


「それは、信じていいんだよね」


――ここで。
首を横に振っても、多分。
彼に嘘は、見破られる。

身動きが取れずに時間切れを待つ私は、卑怯だ。
私にそれを許す彼は優しすぎる……甘すぎる。


私は何にも答えなかった。
なのに、彼はほっとしたように笑って、大きな手のひらを頭の上にぽんと乗せた。


「答えなくて、いいから」

そう言って、私に免罪符を与えて。

「莉緒は何にも言ってないから。俺が、勝手に思い込むだけだからね」

……甘やかす。


人から与えられる、慣れない優しさは――、ひどく居心地が悪くて、涙が出そうだった。
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