琥珀の記憶 雨の痛み
ナツにはちゃんと自分の気持ちを話して、やっぱり協力は出来ないと謝ろう。
きっとあの子は分かってくれる。

それで改めて尚吾くんに、きちんと気持ちを伝えよう。
好きです、私と付き合ってくださいって。


安易に考えていたかも知れない。

それでも、そんな気持ちのまま眠りについたら夢にまで彼が出てきてくる始末。

夢の中でまで甘い彼は、夢の中では既に私の彼氏だった。
私たちはみんなの前で手を繋いでいて、みんなは祝福してくれていた。
ナツも、一緒にだ。

だから――、これはきっと正夢になるのだと、私はすっかり信じたのだ、のん気なことに。


迎えた翌日は、バケツをひっくり返した、という表現がぴったりな大雨だった。

7月7日、七夕だ。
織姫と彦星の今年の逢瀬は見送りになったけど、それほど残念には思っていなかった。

もしも今日ナツと話が出来たら、バイトの帰りはもしかしたら、また前のように尚吾くんとひとつの傘で帰れるのかもしれない、なんて。
どこまでも能天気に、つい前日まで続いていた憂鬱のことなどすっかり忘れていた。


この大雨で、学校には電車で行った。

傘を差していてもびしょ濡れになって漸く辿り着いた坂の上の学校で、制服が乾く間もなく授業が始まる。

先週行われたばかりの期末試験の結果が、いくつか戻ってきた。
どの教科も少しずつ点数が下がっていたけれど、私の気分は下がらなかった。
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