琥珀の記憶 雨の痛み
屋根下は、上から雫は落ちてくるけど多少雨が凌げる。
そこに入ると、ユウくんは傘を私の方へ押し戻してきた。

「濡れるよ?」

一応聞いてみると、小馬鹿にしたように鼻で嗤われた。


それからユウくんは答えもせずに、こっちを見ることもなく無言で煙草に火を点けたけど。

もしかしたら自分が雨を避けるためじゃなく、私が濡れないようにこっちに移動してくれたのかも知れないってなんとなく思えた。

言葉にも顔にも出さないから、やっぱり分かりにくいんだけど。
だんだん、この人のそういう良いトコも分かってきた気がする。


それから――。

社員試験の話だったはずが、なんでか学校の試験の話になり。

学校の成績や学歴なんて――という考えを話したら、思いっきり馬鹿にされた。


「世界が狭い」

「……なんでそうなるのよ?」


むしろ、バイトを始めて私の世界は広がった。
だから考え方も変わったのだと、思うのに。

ムッとして、口を尖らせて反論した。
そしたら。


「頭のカタい親と良い子ちゃん学校と、ここのバイトしか見てねえじゃん」


やな言い方をするのはわざとだと思うけど――、つまりバイト始める前は、私は彼が言った最初のふたつしか見えてなかったってことなのだ。

だから私にとっては世界は開けたほうだけど、ユウくんから見たら、それでも狭いまま。
そう思うと、恥ずかしくて反論のしようもなかった。
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