琥珀の記憶 雨の痛み
「学歴なくても出来る仕事はいくらでもある」

「え……うん。だから、そういう話を」

戸惑いながらも言いかけた言葉は、すぐに遮られた。


「けど、学歴ないと就けない仕事のが多い。同じ仕事でも給料違ったり、出世は出来なかったり」

こっちは見ずに、淡々と言ったユウくんの言葉にドキッとした。
高校中退の彼が、どんな思いでそれを言っているのか。


「バイトだから一高と富岡でも同じ土俵に立てるだけで、正社員だったら話は別。あんた大学も行くつもりなんだろ。断言するけど、あんたが将来入る会社には俺は門前払いされる」


なんで、こんな言い方……。
自分自身のこと、わざと貶めるみたいな。
――線を引く、みたいな。


『ここじゃ異端なんだよあんた』

随分最初の頃に冷たく突き放された言葉が、ふっと過ぎった。
仲間の1人だと、認めてもらえたつもりでいたのに。


「何が言いたいの……? だってユウくん、正社員になるじゃない」

軽く混乱してた。
ここの正社員登用を希望したのは自分なんじゃないの?

それとも彼には何か、学歴がないと就けないような、やりたい仕事が他にあったんだろうか。
だからこんなこと言うんだろうか。


「あんた、将来ここの正社員になりたいわけ?」

質問したのに逆に質問が返ってきて、また戸惑う。

「そういう……まだ、そんな先のこと考えたこともないけど」

あんまり考えもせずに答えると、ユウくんは鼻で嗤った。
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