琥珀の記憶 雨の痛み
「悪い、言い過ぎた。苛々してて」


謝られても顔を作ることも出来ずに、ただ無言で首を横に振った。

とんだ誤解や言いがかりも含まれてはいたけど、私を一番抉った言葉は真実だ。
真実だから、抉られた。

だから、彼が謝ることではない。


「泣くことねえだろ、両想いだったんだろ? 良かったじゃねえか。付き合うことに決めたんなら胸張って笑ってろよ」

捲し立てるようにフォローするユウくんに、もう一度首を振ると怪訝な顔をされた。

「付き合ってない……だってまだ、ナツと話が出来てない」

それだけ言うと、彼は一瞬目を見張ってから、ため息を吐いた。


新しい煙草を出して火を点ける動作を、じっと見ていた。

彼はこんな面倒な話になっても、まだもうちょっとはここにいてくれるつもりなんだ。
なら私は、もうちょっと話してもいいのかもしれない。


「好きだって、言葉にして伝え合ったわけじゃないの。ただそう感じて。多分、お互いに。だから、浮かれて。全部上手くいくと、勝手に思ってた。浮かれて。のん気に」


ユウくんは黙って煙草をふかしていた。
もうこっちを見ないから、聞いてくれてるのかどうかも分からない。

けど、黙れとも帰れとも言われなかったし、彼も立ち去ろうとはしなかった。


「馬鹿だね私。最低だな」


ユウくんから大きく吐き出されたのが、煙草の煙なのかため息なのか、よく分からなかった。
< 193 / 330 >

この作品をシェア

pagetop