琥珀の記憶 雨の痛み
煙草が短くなって揉み消すまで、彼は一言も喋らなかった。

私も、なんとなしにそれをじっと見ていただけで。
沈黙の時間感覚は、よく分からない。


吸い殻を携帯灰皿に収めて、漸くユウくんが口を開いた。


「ナツのことは仕方ねえだろ。元々お前が気にしすぎだっただけなんだよ。普通に考えて全員がうまいことくっつくなんて有り得ねえだろ。どーせ誰かはあぶれんだ、お前のせいじゃねえよ」


堰を切ったようにひと息に彼が言い切った時、私はまた、自分の狡さを知った。

私は悪くないって、誰かに言って欲しかったんだ。
よりにもよって、一番私の狡さを目の当たりにして苛立っているだろうこの人の口から、その言葉を言わせるためにただじっと待っていたんだ。


でも、知ってる。
ユウくんの口から言われて思い知らされてしまった。
私が悪かったことを、誰よりも私が、一番良く分かってるんだ。

だって、私が。


「……約束、したの、ナツに」

「何を」

「協力する――、応援するって」


苛立ったような舌打ちが聞こえた。

ユウくんにこんな話をして、慰められたいのか責められたいのか罵られたいのか、自分でもよく分からない。

分かっているのは、今心の内を話せるのが、この人しかいないということだけだった。


「それで身を引いて偽善者気取るつもりかよ。薄っぺらい嘘まみれの女の友情に振りまわされて、タケは憐れだな」
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