琥珀の記憶 雨の痛み
「あ……あんたのやらしい思考回路と尚吾くん一緒にしないでよっ!」


思わず叫んでいた。
なのに、返ってきたのは「はあ?」という言葉と、蔑んだような視線だった。


「タケは女に欲情しないとでも思ってんの、あんた」

「ッ!」

「あんた、あいつと付き合って何したかったわけ? 手ぇ繋いでお散歩か。今と大して変わんねえな」

「――帰るっ!」


話にならない。馬鹿らしい。
こんな話、付き合ってられない。

踵を返して立ち去ろうとした私を、いやらしい嘲りを孕んだ声が引き止めた。


「試してみれば」

「――は?」

「今から呼び出してやるから、アイツがお迎えに来るの待ってろよ。今のお前見たらどんな反応するか、見物だわ」


言われた意味が分からなくて、思わず振り返っていた。

「しないといいなぁ?」

にやりと口角を上げたユウくんが――、また、近い。

「何を……」

「あいつが。欲情。今のお前に、さ。して欲しくないんだろ?」


強調するみたいにひとつずつ言葉を区切って言いながら指差された、制服の胸元に視線を落としてハッとした。
雨でブラウスが濡れて張り付いて、下着の色まで浮かび上がっていた。


「あ……やっ」

咄嗟に両手を胸の前で交差させて隠す。
当然手を離した傘は再び地面に転がった。

見られてた。いつから?
恥ずかしいのと怖いのとで、混乱した。
わけが分からなくて、泣き出したい。
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