琥珀の記憶 雨の痛み
「自宅にね、最近電話が来るんですって」


――『あんた今日、お父さんの家に、電話してないよね?』
帰宅と同時に聞かれたことを思い出した。
最近、というのは、今日も含めてなのだろうとすぐに理解が追いついた。


「それ、さっきも言ったけど、私じゃないよ」


父は母を疑って電話してきたんだろうか。
ううん、母が私に聞いてきたことを考えれば、父は電話で最初から私を疑うようなことを言ったのかもしれない。


「一体どんな電話よ」

釈然としない気持ちが、多分顔にも出ていた。


父の家の電話番号なんか知らない。
どこに住んでいるかも知らない。
顔すら今となっては記憶も曖昧で、小さい頃のアルバムをたまにめくってやっと思い出すくらいだ。

生きているかどうかすら……、いや、それは今日知ったけど。

なんで今さら、私が――もしくは母が、自分に電話してくるなんて思うんだ。


正直、父に対して私自身はそんなに嫌な印象を持っていなかった。

伯母がどう言っていても、私にとっては『父親が外に女を作って私と母を捨てて出て行った』のが事実だ。

だけど、だからと言って特別に恨んできたわけではない。
単純にほとんど覚えていないせい……恨むほど記憶にすら残ってないから、だったのかもしれないけど。


――今の今までは、だ。
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