琥珀の記憶 雨の痛み
「幻滅したんでしょ、お父さんのこと」
水道を止めるのを見計らったようなタイミングで、そう言われて。
見ればちょうどお茶も入ったようで、その場で湯飲みをひとつ渡された。
聞かれた質問は、否定しがたい。
実際良い父親・良い家庭人ではなかったのかも知れないが、それでも嫌悪感はなかったのに。
さっき聞かされた話で、がらりと印象が変わってしまった。
苦笑いで受け流すつもりが、頬骨のあたりが痙攣したように引きつる。
それを見て苦笑したのは母の方だった。
テーブルに戻ると、母は今度は向かいではなく隣に座った。
さっきよりも近い距離が、母の――諦め、みたいなものの表れかもしれない。
「お父さんのことサイテーって思いながら、あんた、そんなお父さんに引っかかったお母さんのことも馬鹿にしたんでしょ」
「ええっ!? 別にそんな……」
思わぬ方向からの発言に、今度はこっちが狼狽えた。
時に真面目すぎ、厳しすぎ、正しすぎる母は、たまに少し怖かったりうっとおしかったりもする。
母に対しては、畏怖に似た感情も、多分ある。
私が最近自覚した、相手を格付けして見下すような傾向はどうやら母親譲りで、そういうところは良くないとも思うけど。
でも。
それと馬鹿にするのとは、全然違う。
母に、私が馬鹿に出来るようなところはひとつもないのに。
母は私の否定の言葉は耳にも入らないのか、珍しい拗ねたような表情で、顔をこちらに向けたままテーブルに突っ伏した。
水道を止めるのを見計らったようなタイミングで、そう言われて。
見ればちょうどお茶も入ったようで、その場で湯飲みをひとつ渡された。
聞かれた質問は、否定しがたい。
実際良い父親・良い家庭人ではなかったのかも知れないが、それでも嫌悪感はなかったのに。
さっき聞かされた話で、がらりと印象が変わってしまった。
苦笑いで受け流すつもりが、頬骨のあたりが痙攣したように引きつる。
それを見て苦笑したのは母の方だった。
テーブルに戻ると、母は今度は向かいではなく隣に座った。
さっきよりも近い距離が、母の――諦め、みたいなものの表れかもしれない。
「お父さんのことサイテーって思いながら、あんた、そんなお父さんに引っかかったお母さんのことも馬鹿にしたんでしょ」
「ええっ!? 別にそんな……」
思わぬ方向からの発言に、今度はこっちが狼狽えた。
時に真面目すぎ、厳しすぎ、正しすぎる母は、たまに少し怖かったりうっとおしかったりもする。
母に対しては、畏怖に似た感情も、多分ある。
私が最近自覚した、相手を格付けして見下すような傾向はどうやら母親譲りで、そういうところは良くないとも思うけど。
でも。
それと馬鹿にするのとは、全然違う。
母に、私が馬鹿に出来るようなところはひとつもないのに。
母は私の否定の言葉は耳にも入らないのか、珍しい拗ねたような表情で、顔をこちらに向けたままテーブルに突っ伏した。