琥珀の記憶 雨の痛み
「お母さん、別に無理してるつもりなんかないんだけど……でも、そっか」

と、母は何か1人で納得したみたいにうんうんと頷いた。


「たまには莉緒も、バイトの後に時間気にせずにゆっくり外でご飯食べてきたりしたいか」

「え? いや、私別に、そういうつもりで言ったわけじゃ……」


バイトの後に、門限を気にしているのは私だけだ。
確かにそれは窮屈だったりもしたけど、料理を教えてと言ったのとは全く関係ない。

なのに母は私の言い分は全く聞かずに、したり顔で笑った。


「そういう時間でもなくちゃ、ゆっくりデートも出来ないでしょ? 相手が学校の子ならともかく、バイト先の子なら尚更」


――え。
今、一体なんて?
聞き間違いじゃなければ確かに今、相手がバイト先の人だと……。


「ちょ、お母さん? 私、バイトの人の話なんか……」

「うーん、でもこっちも夕飯の準備とかあるから、事前に連絡だけはすること。それからどんなに遅くなっても、日付だけは越えないで。あと、遅くなる時は絶対家まで送ってもらうこと。それから……」

「お、お母さんってば! なんの話してるの!?」


何をそんなに慌ててるの、とでも言いたげな不思議そうな顔で、母は少し首を傾げただけだった。
そしてその口は、止まらない。


「相手が年上だからって、変に背伸びして合わせようとしちゃだめよ。あんたはまだ高校生なんだから。まあ、向こうもわきまえてる人みたいだからいいけど……」


は、はあ? ……年上!?
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