絆の軌跡
ベッドの上から月を眺める。
森ではあんなに眠かったのに、
体験授業での興奮のせいか、全く寝付けなかった。
明日は朝早いのに…いや、もう今日か。
時間と共に目が冴えてくる。
どうにも寝られないので、ベッドから降り、窓に近付く。
城壁で外の風景が見れないのは惜しいが、城内の植物も月明かりで照されて美しい。
外を散歩してみれば寝られるかもしれない。
ふと思って保健室の外へ出るドアをこっそりと開けた。
ネグリジェのまま外に出る。
少し冷たい夜風が頬を掠めた。
草の上を歩くと、サクサクと音がする。
消灯時間を過ぎたら部屋から出てはいけないと聞いていたので、
遠くまで行くのは躊躇われて、取り敢えず一番近かった玄関前の円形の広場に向かう。
銅像の前に腰を下ろして月を見上げる。
ここで本読んだら楽しいだろうなぁ。
月明かりで周りはよく見えた。
教科書を早く読みたいな。
そんなことを思っていると、視界の隅で何が動いた。
「!?……」
サッと立ち上がってそちらを見る。
…何もない。
勘違いか。
良くないことをしているせいか、神経が尖っていたようだ。
ふーっと息を吐いて、ベンチに座る。
「こんばんは」
「っ!?」
耳の極近くで囁かれた挨拶。
ベンチの端に飛び退く。
声の主は…
「あ、くっクロエ先生…こんばんは」
夕刻会ったクロエ先生だ。
「覚えてくれてましたか、光栄です」
微笑む先生は月明かりで照されて妖艶な美しさが浮き出る。
「しかしいけませんね…こんな時間に、しかもネグリジェでお散歩なんて」
「すいません…寝付けなかったもので」
「まぁ環境が変わるとそんなものですね」
先生は長い脚を組んで、月を見上げる。
その横顔はとても綺麗だ。
「先生はどうしてここに…?」