イジワルな先輩との甘い事情
大丈夫だ。先輩はちゃんとしてる人だし、今朝会社に欠勤の連絡だって入れてるんだから。
だけど……あの着信の件数を考えると、やっぱり悠長にも構えていられなくて。
長距離を走るのなんて高校の持久走大会以来だったけど、先輩のマンションまでの道を必死に走った。
息を切らせながら、ふと、突然インターホン押すのは失礼じゃないかと当然の疑問が湧いたのはエレベーターの中でだった。
一度、電話を入れてから伺うのがいいのかもしれない。
でも……この間断られた事が頭を過り、どうせならドアの前まで行く事にした。
先輩だって出たくなかったら、私をドアホンで確認だけして出ないだろうし。
迷惑をかけるのも、これがきっと最後だ。
だから――。
506号室のインターホンを押すと、ピンポーンという聞きなれた音が聞こえた。
何度となく押したインターホンをじっと見つめながら待っていると……しばらくしてから、内側から鍵が開いた音がした。
画面で私だって確認したハズなのに開けてくれたドアに、胸の底の方からじわっと熱が上がった。
こんな事でって感じかもしれないけど、嬉しくて。
ゆっくりとドアが開いて、先輩と目が合う。
顔色の悪さとか、スウェット姿に、よっぽど悪いんだって瞬時に思った。
先輩は、はぁ、って具合悪そうに息を吐いてから口を開く。