イジワルな先輩との甘い事情
「俺の事、嫌いになったんじゃなかったの?」
「え? 嫌い……には、なってませんけど……?」
いきなりすぎる質問に眉を寄せながら答えてから、そんな事より、と聞き返す。
「熱、高いんですか? あの、迷惑じゃなかったらこれ……」
持っていたビニール袋を手渡すと、先輩はそれを受け取ってから少し考えて「入って」と言った。
今日は月曜日なのに入ってもいいのかな、とも思ったけど……迷っていると先輩が腕を掴むから。
熱く力ない手に、こくりと頷いて先輩の部屋に入った。
玄関に先輩以外の靴がない事をなんとなく確認してから部屋に上がる。
先輩がソファーに座るから、近づいて、先輩の前の床に膝をついた。
「熱、計りましたか?」
顔を覗き込むようにして聞くと、先輩は目を伏せたまま「俺の事、嫌いになったんじゃなかったの」と、さっきと同じ問いを繰り返した。
「電話も出なかったし」
「あ、スマホの電源さっきまでずっと切ってたので……それで」
「なんで電源切ってたの?」
「だって……昨日、あんな事言ったのに……先輩から電話もメールもなかったら悲しいから、だったら電源ごと切っちゃえって……思って」
答えにくい質問だったけど、うっと少し詰まりながらも素直に白状した私に、先輩はしばらく黙った後、はぁーっと息をつく。
当たり前だ。
自分から終わりにしたいって切り出したのに、引き留めて欲しかったなんて誰が聞いたって呆れてしまう。