イジワルな先輩との甘い事情
「でも、今日先輩が休んでるって聞いて……ちょっと気になってスマホの電源入れたら、着信がいっぱいあって。
もしかしたら先輩が私に助けを求めてるのかもしれないって思って……」
「それで、来ました」そう続けると、先輩がふっと笑った。
今日初めて見る笑顔に、ギュッと胸が締め付けられて一気に息苦しくなった。
「俺ももういい大人だし、風邪くらいで花奈に助けて欲しいなんて電話しないよ」
「……でも、どうしても心配で、居ても立ってもいられなかったから。
あの、熱は? ちゃんと何かお腹に入れられてますか?」
さっきから何度聞いても一向に答えてくれない問いをもう一度すると、先輩はようやく「37、6度」と答えてくれた。
「朝から比べたらだいぶ下がった。昼はゼリータイプの栄養補助食品とって薬も飲んだから、あとは安静にしてれば大丈夫だよ」
「そうですか……。あの、お粥とか食べられそうなら作りますけど。
それか、果物とかがよければ今から買ってきます」
迷惑にならないか、顔色を伺いながら聞くと、先輩はそんな私に微笑んで「じゃあ缶詰開けて」と言った。
「吊り戸に桃とかパインの缶詰がいくつか入ってるから。
花奈の分も用意して一緒に食べよう」
「あ、はい……」
いいのかな、と思ったけど、先輩をひとりにしておくのも心配だから、お言葉に甘える事にする。
食べたら薬を飲んでもらって熱を計って……それで、他に手伝える事がないか聞いて、なければ帰ろう。
それで……今度こそ、終わりにしなくちゃ。
心配で、勢いで部屋まで来ちゃったけど、本来なら来ていいハズがないんだから。