イジワルな先輩との甘い事情


そう心に決めてから立ち上がり、吊り戸から缶詰をみっつ取り出す。
黄桃に、パイン、それにアロエ。
ナタデココもあったけど、なんとなく消化が悪そうだなと思ってそれはやめておく事にした。

ふたつのお皿にそれぞれを分けて、フォークと一緒にトレーに乗せて持って行くと、先輩が「ありがとう」とお礼を言う。
顔色は少し悪いけど……そこまでぐったりしているわけじゃなくてホッと胸を撫で下ろした。

缶詰は常温保存だったけど、この時期だし冷たすぎなくて丁度よかった。
飲み物にスポーツドリンクも買ってきたけど、身体には温かいモノの方がいいのか考えて……結局分からなかったから聞くと、スポーツドリンクでいいって答えが返ってきたからそれをコップについだ。

「味覚、ありますか?」

食べながら聞いた私を、先輩はおかしそうに笑う。

「そこまで熱高くないからね。正直に白状すれば、朝と昼は味は分からなかったけど」
「無理して食べないでくださいね。食べ終わったら、薬飲んでもう一度熱計らせてもらってもいいですか?」

「いいよ」って答えた先輩が笑う。
なんだろう。さっきから笑われてるけど……と思っていると、心の声が聞こえたかのようなタイミングで先輩が言った。

「花奈、結構心配性だよね。一生懸命看病してて可愛いと思って」

食べ終わった先輩が、カシャンって小さな音を立ててフォークをお皿に置く。
それから私を見て、もう何度目かも分からない問いを言葉にした。

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