イジワルな先輩との甘い事情
「花奈にお願いされちゃったら、頼まれたから言ってるみたいになるでしょ」
私の口から手を離した先輩が、一度目を逸らして……それからまた私を見た。
真っ直ぐな瞳に射抜かれ、胸が大きく高鳴る。
先輩の緊張が伝わってきているのか、それとも私自身が緊張しているのか……ドキドキ鳴る音が静かな部屋に聞こえちゃうんじゃないかってほど主張していた。
そんな静かな空間だから……先輩の言葉がハッキリと聞こえた。
「好きだよ。そんな事知ってると思ってた」
響きのいい低い声が耳に届き、頭の中をゆっくりと時間をかけて浮遊した後、胸の中に静かに溶け込んでいく。
黙ってそれを噛みしめながらまた少し涙をこぼした私を、先輩は何も言わずに見つめていた。
静かな部屋には、先輩の言葉の余韻が漂っていてジワジワと胸を締め付けるから、涙が止まらなくなる。
「そんなの、初めて聞きました……」
「犬くらいにしか思われてないと思ってた」と続けると、先輩がふっと笑う。
「花奈をそんな風に見た事ないけど」
「だって、終わりにするって言っても、先輩何も言わなかったし……。
それに、今まで好きだなんて一度も言ってくれなかったから……。
だから、私、先輩は私の片想いに付き合ってくれてるだけで、いつか本命の彼女ができたら終わりになるんだって……ずっと、思って……」
涙に邪魔されてそれ以上言えなくなって、ひっくと声を漏らして肩を揺らした私を見て、先輩が小さくため息を落とす。
呆れたというよりは、仕方ないなって感じの、温かいため息だった。