イジワルな先輩との甘い事情


考えてみれば、こんな風に触れられるのは久しぶりで……想いがきちんと通じてからは初めてで。
触れる先輩の手に、柔らかく頬をすり寄せるとそれだけで愛しさが湧きあがってきて、溢れるみたいだった。

「おいで」っていつもみたいに言う先輩に、立ち上がって隣に座ろうとすると、腕を引かれて、先輩の上に座るように誘導されて顔に一気に熱がこもった。
先輩の腰を跨いで座るような格好になってしまい、なんだか恥ずかしい。

「あ、の……でも、重いですし……」
「大丈夫だよ。花奈は軽いから」
「でも……」

私は一般女性からしたら小柄かもしれないけど、でもこどもじゃないんだし、先輩の上に座るなんて絶対に重たいに決まってる。
だけど先輩は私が何を言っても大丈夫としか言ってくれなくて……仕方ないから、諦めてゆっくりと先輩の上に腰を下ろした。

座ってる先輩の上に向き合って座ると、そのままキュッと抱き締められたから、私も先輩の背中に腕を回した。
私の方が上に座ってるから身長差がなくなって、同じ目線が新鮮だった。
先輩の肩に顎と口元までを埋めると、ボディーソープの香りが鼻をくすぐる。

やっぱり好きだなぁと、湧き上がってくる切なさと幸せを噛みしめながら抱きついていると、先輩の腕の力が不意に緩んだ。

「あ、寝ますか? それとも何か食べますか?」

まだ病み上がりだし、それに朝ごはんがまだなら薬もまだって事だから、ちゃんと食べて飲まないと。
そう思って離れた途端、また背中を抱き寄せられ……そのまま触れるだけのキスをされた。


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