イジワルな先輩との甘い事情


「せんぱ……」

驚く間もなく、何度も唇を合わせられて、仕方なくギュっと目をつぶる。
私の顎を手で支えた先輩が、ゆっくりとじらすように角度を変えてキスするから、病み上がりの先輩を前に不謹慎だって思いながらも、ぞくぞくとした感覚が背中を走った。

密着したままの身体が恥ずかしくて、乗っているような体勢も恥ずかしくて、執拗にされる触れるだけのキスが……もどかしくて。
堪らず「あの……っ」と止めると、先輩は一度やめて至近距離から私を見つめた。

「キス、舌使ってもいい?」
「え……」
「でも、移しちゃうかな」

困り顔で微笑む先輩に、どうしょうもなく胸が締め付けられてしまって。
先輩は病み上がりなんだからとか、薬飲んでもらわなくちゃとか、そういうもの全部が飛んで、気付いたら「移されたい」って声がもれていた。

はって笑みをこぼした先輩が「本当に花奈は……」って、呟くように言いながら唇を合わせる。
触れ合った唇を開けられて舌が重なって、それだけで、熱を持った吐息がもれる。
それ全部飲み込んじゃうみたいに深く口づけられて、意識がとろけ始めた頃、体勢を変えられそのままベッドに押し倒された。

「ふ……ぁ、ん……っ」

ぼやけた思考回路でも、さすがにこれはダメだと言おうとしたのに。
抗議の言葉まで全部を塞がれて、それは言葉にはならず甘い声に変えられる。

ゆっくりと解かすようでいて、でもどこか強引なキスに、次第に抵抗しなくちゃっていう考えが薄れていく。
求められる事が嬉しくて、押さえつけるようにされていた手を、ギュッと握り返した。

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