イジワルな先輩との甘い事情


「違うテーブルをじっと見てたから、気になる男でもいたのかと思って」
「いえ……同じ会社の社員がいたので、少し見てただけです」
「俺、和田。山中工務店の社員なんだ」

工務店……って事は、大工さんだとかそういう関係なのかもしれない。
だから、茶髪でも長くてもいいのかなと思って髪型が腑に落ちた。

同じように自己紹介をすると、「じゃあ乾杯でもしておこうか」と言われて、なんでだろうと少し疑問に思いながらもそれに応えた。

アルコールが得意じゃない事を言うと、「んー、じゃあこれがいいかな」と和田さんが適当に頼んでくれる。
間もなくして渡されたグラスには、オレンジ色の液体が入っていて、それを和田さんのグラスとカチンと小さな音を立てて合わせてから口をつけた。

チューハイなのかカクテルなのか、ビールよりは飲みやすい。
何のお酒だろうと、持ったグラスを眺めていると「バレンシアってカクテル」って教えられた。

「あ、バレンシアって、ジュースでも聞いた事あるような気がするんですけど、それと一緒ですか?」
「んー、多分そうなんじゃない? これもオレンジジュースがベースのハズだし。
飲みやすいでしょ」
「はい。おいしいです。和田さん、お酒、詳しいんですね」
「結構好きだから、色んな味試すうちに覚えちゃって。でも、アルコール詳しいと食いついてくる女の子多いから役に立ってるけどね」

思わず笑みがこぼれたのは、和田さんがなんとなく松田に似ていたからだ。
あっけらかんとしていて、でも女の子が好きで……見た目がすごく軽い。


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