イジワルな先輩との甘い事情
腰丈のシャツの裾からチラっと見えるベルトがごつくて、大丈夫なのかなって少し思ったけど、見渡してみれば聞いていた以上にみんなラフな格好をしていた。
女の子は、ニットにミニスカートなんていう格好の子もいるし、自由な感じだ。
男の人も私服の方が目立っていて、スーツ姿なのは、半数以下。
先輩はスーツで、それを見て、なんとなく安心する。仕事として一線引いてくれている気がして。
松田も言い寄られるのを危惧してなのかスーツ姿だった。
「柴崎さん、この会出るの初めて? 俺、三年連続で出てるけど、初めて見る気がする」
「初めてです。うちの会社は毎年、違う課が出るので」
「へー。じゃあ今日逃してたら会えてなかったって事か。よかったー、今年来ておいて」
こういうノリには正直どう応えればいいのか分からなくて、ははって愛想笑いするしかできない。
長井工業の関連会社の社員相手ってなれば、無碍にする事もできないし……そう考えると笑ってやり過ごすのが一番なんだろうけど。
お世辞とか社交辞令なんだろうなっていうのは分かっていても、反応に少し困る。
「長井工業の若社長、人の恋路眺めてるのが好きなんていい趣味してるよね」
こそっと耳打ちしてきた和田さんが、顎でくいっと部屋の奥の方を指し示すから、視線を移すと。
部屋全体を眺めながら、グラスに口をつける若社長に気づいた。
壁に寄りかかったまま招待客を眺めてニヤニヤしている様子に、呆れて苦笑いが漏れてしまう。