イジワルな先輩との甘い事情


それと同時に、ざわざわと今までよりも少し騒がしくなる。
「本当に見えないね」「ちょっとドキドキする」色んな声が聞こえてくるけど……確かにこの広い部屋が真っ暗になると少し怖い。

「真っ暗ですね」

隣にいるハズの和田さんに話しかけながら、なんとなく上を見上げる。
見上げたところで、真っ暗な空間が広がっているだけで何も見えないのだけど。

去年、相手の場所が分からないって苦情が出たなんて若社長は言ってたけど……それは多分、遠回しにもうやめてくださいって事だったんだろうなぁと考える。

それを勘違いした若社長が、じゃあって、謎の猶予期間を設けたんだろうなぁと思うと苦笑いがもれた。
本当に若社長はこのパーティを楽しんでいるんだなぁって。

人の恋路を眺める事の何が楽しいのか私には分からないけど、そういうテレビもあるみたいだし、そこまでおかしな趣味じゃないのかもしれない。
若社長はただ、それが個人で楽しめちゃうだけの財力と地位があるから厄介だってだけで。

暗くなって数十秒が経った頃、「あのさ」と話しかけられて声のした方向を見る。
まだ暗闇に目が慣れていないせいで何も見えないけど、和田さんだっていうのは分かってたから「はい」と答えようとして……。
それよりも先に聞こえてきた「花奈」って呼び声に、ぴくって肩がすくんだ。

その肩を抱き寄せられてさらに驚いて、思わず声を上げそうになったけど……。
軽くぶつかってしまった胸も、肩を抱く腕もよく知っている事に気づく。

だから「先輩?」と小声で呼ぶと、くって何かに唇を押さえられた。


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