イジワルな先輩との甘い事情


水音に混ざって聞こえてきた言葉に、驚いて思わず手が止まる。
「え」と無意識に声を落としながら横を見ると、笑顔の安藤さんがこちらを見ていた。

「どっちが相応しいか、勝負しましょう」
「……勝負?」
「はい。北澤さんをかけて。
……先輩に自信がないなら、構いませんけど」

ぼそっと付け加えられた言葉に、ぼんやりとしていた頭が目を覚ます。
ポンポンと話題を変えて行く安藤さんに圧倒されている場合じゃない。

「する」

ハッキリと言うと、安藤さんが「自信あるんですね」とにっと口の端を上げて笑うから大きく頷いた。

「北澤先輩への気持ちだったら……誰にも負けない」
「言いますねー、先輩」

驚いたように笑った安藤さんが笑顔のまま続ける。

「ズルい手は使いたくないので、誘い出して社外で会ったりはしません。
それにもちろん、口外もしません。恋愛沙汰なんかで仕事しづらくなるのもバカバカしいですし、個人的な感情持ち込みたくもないので、仕事は普通にしましょうね」

「負けませんよ」とにっこり笑う安藤さんに……清々しいほど真正面からの宣戦布告に。
「私も」と答えて視線に力を込めた。


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