イジワルな先輩との甘い事情


「でも、仕事でもやっぱり負けたくないから。
北澤先輩がかかってる以上……安藤さんも先輩を好きだっていうなら、私、何でも負けたくない」

はっきり言い切ったせいか、安藤さんは驚いた顔をして少し黙っていた。
ウィーンっていうエレベーターの機械音だけが、静かな箱の中に響く。

でも、真っ直ぐに見つめているうちに、安藤さんが「なんなんですか、もう……」って、にっと口の端を上げて笑った。

「そんな事言われたら私だって負けたくないですからね。元々負けず嫌いですから、私。
柴崎先輩みたいに小さくて弱々しい女の子なんて、すぐ食っちゃいますからね」
「私だって……っ」

と、少しどもりながら言いかけたところで、エレベーターがポーンと鳴って扉が開いた。
そこから颯爽と下りていった安藤さんが、数歩歩いたところで振り返る。

黒い綺麗な髪が、ばさって翻って肩に落ちた。

「とりあえず、日曜日の生保の試験……どっちが点数とれるか勝負ですね」
「うん」

こくりと深く頷いた私に「お疲れ様でした」と笑顔を向けてから安藤さんが歩き出す。
その後ろ姿をじっと見つめてから、私も一歩踏み出して……鞄の中で震えるスマホに気付いた。

そういえば仕事が終わってから確認していなかった事を思い出して、エレベーターを下りたところで取り出してみて驚く。

着信は、北澤先輩からだったから。
どうしたんだろうって考えて……今日が水曜日だったと思い出しハッとする。

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