イジワルな先輩との甘い事情


正直、勝負とか勝敗とか頑張り方とかよく分からないけど、でも負けたくない。
検定の得点で勝ったからって先輩が手に入るわけではないけど……それでも、負けたくなかった。

私には、この想いしかないんだから。

立ち止まったまま俯いてぐっと歯を食いしばっていた時、不意にエントランス内側の自動ドアが開いた。
ウィーンという静かな音にハッとして顔を上げると、そこには北澤先輩の姿があって……びくっと肩が跳ねる。

先輩は私を見ると小さくため息を落としてから目の前まで近づいた。

「遅いから心配した。今来たところ?」
「あ、はい……」
「ここに来るまでに何かあったわけじゃない?」
「あ、はい。それは全然」

いつもよりも一時間以上遅い時間だったからか、夜道を心配してくれる先輩に、胸の前で両手を振る。
先輩が私が肩から下げていた鞄をとって、「行こう」って歩き出すから、その隣に急いで並ぶ。

とりあえず、安藤さんとの事があるからそれを言わなきゃだけど、エントランスでっていうのもおかしいから、先輩の言葉に甘えて部屋に上がらせてもらおう。
それから話して、帰って生保の勉強だ。

そう順序を頭の中で確認しながらエレベーターに乗って、506号室に入った。

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