イジワルな先輩との甘い事情


血もわずかに滲んではいるけど、絆創膏を貼るほどのものでもないし、放っておけばそのうち塞がる程度の浅い傷。
だから別に大丈夫だと言おうと顔をあげて、びくって肩がすくんだ。

だって、先輩が私の指先を口に含もうとしているところだったから。
右手全体を握ったまま薬指の先を唇に挟まれて、舌で優しく舐められて、咄嗟に手を引こうとしたけど、がっしり掴まれてて振り払えなかった。

「あ、あのっ、全然大丈夫ですから……っ」

手を握ってさらには舌を這わせながら「そう?」なんて聞く先輩に、こくこく頷く。
先輩が私を見てくすっと笑ったのは多分、私の顔が真っ赤だったからだと思う。

恥ずかしすぎて顔が熱い。
ぴちゃって、わずかに音が聞こえたりするから余計に。

「せ、先輩……っ」
「ん?」

指を舐める先輩の舌が、手当てって意味のものじゃなくなって色を含み始めたのに気づいて、慌てて止める。
ぐいってもう片方の手を使って右手を離してもらうと、先輩に不思議そうな顔をされた。

私がこうして断るのなんて珍しいからだと思う。
先輩から誘ってくれた時はもちろん、そうじゃない時だって、はしたないかなって思いながらも私からお願いしちゃうくらいだし。

だから、先輩から作ってくれた甘い雰囲気を壊すのはすごくすごく勿体なくて悔しいけど……。
今日は我慢だ。

「あの、今日はそういう事するために来たんじゃないんです……」

今まで握られて舌を這わされていた右手を、左手で抱き締めるようにして胸の前に持って行く。
先輩の舌の感覚が残っていて、その余韻にさえ心臓が反応していた。

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