イジワルな先輩との甘い事情


あんドーナツを片手にそう嘆いた園ちゃんが、チラっと隣に視線を向けて「やっぱり、松田も大きい方が好きなわけ?」と聞くと、それを聞いた松田がコーヒーのカップをかちゃりと置く。

「いや、俺は普通がいい。やたらデカいメロンみたいなのは正直扱いに困るし」
「うわー、気持ち悪い」
「うわー、出たよ、誘導尋問。園田は俺がなんて答えても気持ち悪いって返事するの決めてたんだろ、どうせ」
「まぁね」
「その前におまえらさぁ、なんで俺もいるのに胸の話とか平気で始めるんだよ。
俺、ドーナツ好きでもないのに急に呼び出されたのにその挙句、ちょっとでも返答間違えたら気持ち悪いって言われかねない、男にとってデリケートな話題出しやがって」
「仕方ないでしょ。男女入り混じったグループでくると割り引かれるんだから」
「ああ、確かに割り引かれてはいたけどな……。でも、割り引かれる以前に、全額俺のおごりっておかしいだろーが!
なんで急に呼び出されて好きでもないドーナツの食べ放題に強制参加させられてる上、俺のおごりなんだよ!」

松田の怒りに、園ちゃんはジンジャーエールを飲みながら「先週合コンセッティングしてあげたのになぁ」と呟く。
あまりに温度差があるけれど、ふたりの会話はいつもこんな感じだ。

無茶ぶりをするのは園ちゃんだけど、松田はなんだかんだと園ちゃんにいつも借りがあるから怒ったところですぐ言い返されてぐうの音も出なくなるのがオチ。
いい加減学べばいいのになぁ……とは言葉にはしないけど。

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