イジワルな先輩との甘い事情
「そこそこ顔のいい松田くんは、女の子ひとり、持ち帰ったらしいじゃない」
「い、いや……それはさぁ、なんていうか、流れで……」
「流れでやっちゃってんのに付き合おうとかそういう言葉はなかったって、女の子側から報告受けてるんだけど」
「だってほら、付き合うにはまだお互いを知らなすぎるだろ? だから、吟味を重ねてだな……」
しどろもどろになりながら、なんとか誤魔化そうと苦手だっていうドーナツをばくばく食べる松田に、園ちゃんは大げさなため息をついた。
「別にいいのよ。松田がひとりの女と付き合うつもりがないのは分かってるし。
相手の子だって、会ったその日に泊まっちゃうくらいなんだからそこまで本気でもないんだろうしね。
お互いそういうの分かり合って事に及んでるなら」
「あ、それはもう! 俺ちゃんと言ってるし。過去に一度、深海に達する勢いで傷ついてから、誰かひとりとまともに付き合えなくなってるからって」
「まったく、それで許す女も女だけど、付き合えないくせに関係持つ松田も松田よね」
「なんだろうなぁ。男の狩猟本能がそうさせてるんだろうなぁ……なんつーか、悲しい性だよな」
「他人事みたいに言うな」ってツッコみと同時に後頭部を叩かれた松田が、頭をさすりながら私に視線を向ける。
「柴崎には分かるよな、俺の気持ち。なんてったって仲間だもんな、俺たち」
にこ!と爽やかな笑顔で同意を求める松田に苦笑いを浮かべて首を振った。