イジワルな先輩との甘い事情
「私のとはちょっと違うと思う」
「いや、まぁ厳密には違うけどさ、付き合ってないのに身体の関係があるってとこだけは一緒じゃん。
……でもあれか。柴崎は北澤さんだけが特別って感じだからやっぱちょっと違うか」
ドーナツを食べながら頷いていると、向かいの席に座る園ちゃんが加勢する。
「そうよ。松田の乱れた女関係と一緒にしないでよね。花奈子のは一途が過ぎるくらいの純愛なんだから。
……故にいいように遊ばれちゃってるだけで」
結果的にフォローにはならなかった園ちゃんの言葉に、苦笑いしながらドーナツを半分に割ると、たっぷりに降りかかっていたシュガーがポロポロとお皿に落ちた。
「いいの。私が好きでしてる事なんだから。
だから。北澤先輩は何も悪くない」
言い切った私に、園ちゃんは呆れた顔でため息をついて……松田はさっき無理やりに詰め込んだチョコたっぷりドーナツの後味に苦しんでいた。
北澤先輩は何も悪くない。
お願いだからってすがったのは、私の方なんだから。
「でも、北澤さんってお願いすれば抱いてくれるなら立候補が殺到しそうよねー」
急にそんな事を言い出した園ちゃんに、ギョッとした顔を向けるとニヤっと悪い笑みを返される。
私とか松田をからかう時に見せる表情だ……と思った時にはもう遅くて。
「私も頼んでみようかなぁー」なんて言い出すから、全力で止めた。