イジワルな先輩との甘い事情


「松田さんが出てこようとしたから、私もすぐ課に戻りましたけど。
先輩ひとりじゃ書庫の伝票整理大変かなと思って手伝おうとして行ったんですけど、なんか盗み聞きしちゃってすみません」
「あ、そうなんだ……ううん」

とりあえず、先輩との事は気づかれていなかった事に安心して笑顔で首を振ると、安藤さんが自嘲するような笑顔を浮かべた。

「松田さんとの話聞いて……後から割り込んだのは私の方なのに、私の可能性潰してるんじゃないかとか悩んでる先輩見てたらなんか、嫌になっちゃって」
「嫌って?」
「私、確かに狙うとか言いましたけど、そんなの本当に軽い気持ちだったんです。
先輩が乗ってきたの見たら、北澤さんどうのっていうよりも先輩との競争が楽しそうだなーって思って、勝負しましょうなんて方向に切り替えられちゃうくらい、軽い気持ちだったんですよ。
なのに、先輩は私の邪魔しちゃってるんじゃないか、なんて言ってて……罪悪感っていうんですかね。自分にもやもやしました」

落ち込んだような顔して笑う安藤さんに何を言えばいいのか分からずにいると、隣にいる先輩が「それはつまり、花奈をからかって楽しんでたけど、それにしたってあまりに花奈が純粋に引っかかるから自己嫌悪に陥ったとかそういう事?」なんて聞くから驚く。
だけどもっと驚いたのは、それを安藤さんが「まぁ、そうですね」と苦笑いしながら肯定した事だった。

驚く私に、安藤さんが申し訳なさそうに笑う。



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