イジワルな先輩との甘い事情


園ちゃんが冗談で言ってるのはもちろん分かってるけど、それでも止めなくちゃ気がすまないのは、私が北澤先輩を独り占めしたいからで。

でもきっと、私の知らない場所で北澤先輩はたくさん告白されたりとか……もしかしたら、それ以上とかあるんだろうなぁっていうのも分かってるから。
それを思うとツラい。

都合のいい女でもいいから傍にいたいって、最初に望んだのはそれだけだったのに。
傍にいればいるほど、わがままな想いがポンポン湧き出てきて……それを抑えこむのが最近少し大変だ。


園ちゃんたちと別れて向かったのは、会社から徒歩十分、さっきまでいたドーナツ屋さんからは徒歩二十分の場所にあるマンション。
築五年のまだまだ新しい建物の外壁はダークグレーで統一されていている。

いつ来てもきちんと剪定されている植木がグルッと建物の周りを囲んでいて、ダークグレーに緑を添えていて、夜には地面に埋めこまれている間接照明が建物を照らす。
シンプルで可愛らしさだとかはないけれど、洗練されていてオシャレだと思う。

もっとも、北澤先輩が住んでるからって理由でよく見えてしまうのかもしれないけれど。

秋めいた風に吹かれながら、もうすぐ冬だなぁと思う。
私が告白したのが五月のゴールデンウィーク中だったから、この関係が始まってからもうすぐちょうど半年だ。

あっという間だなぁと考えながら、エントランスに入りエレベーターに乗る。

< 7 / 177 >

この作品をシェア

pagetop