イジワルな先輩との甘い事情


「私はB……」って、すごく小さい声で言ったのに、聞こえたらしい園ちゃんにギロリと睨まれて目を逸らす。
いつも通りのふたりの会話を聞きながら、園ちゃんがとってきてくれたプリンブリュレをスプーンですくった。

ココアと同じように、少し甘くて少し苦い。
それでもそこにつまった優しさは、私の心についた傷を埋めるには十分で。

どんどんヒートアップしてギャアギャア口論みたいになってるふたりを眺めて笑いながら、お皿に乗ったケーキを食べ終えた。



時間制限ぎりぎりまでケーキを胃に押し込んだ帰り道。
駅まで歩いて、特に行きたい場所もないから帰ろうかってなったところで、園ちゃんが「あ」と声を上げた。

視線の先を追って……駅から出てきた人混みの中に古川さんの姿を見つけ、驚く。
白い膝丈のワンピースにピンク色のコート、足元にはブラウンのショートブーツを履いていて、ボブの長さの髪は内側にくるんと巻いてあった。

「出たよ、なにあれ。三十手前でピンクのコートって」

嫌そうな声で言う園ちゃんに「三十手前?」って聞き返すと、「あの人今年で29だって」と驚きの回答をされた。

なんとなく……この間の会話した感じではもっと若いのかと思ってたっていうのは失礼なのかな。
私が言うのもアレだけど、あまりきちんと物を考えてなさそうだったから、もしかしたら私よりも下かなって思ってたのに……。
29って言ったら、北澤先輩よりも年上だ。




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