イジワルな旦那様とかりそめ新婚生活
いや、それよりも……。

「ヨダレなんか垂らしてませんよ!」

私が真っ赤になって反論すると、刹那さんはクスッと笑った。

「そうだったか?ともかく、一風変わった奴だと思って興味を持った。俺が見かける時はいつも寝ていて、図書室が冷え込んだ時は何度か声をかけた事もあった」

……そう言えば、結婚式で「桜子」って呼ばれた時、懐かしい感じがした。

「結局起きなかったから、学ランをかけてそのまま生徒会室に戻った事が何度かあった」

何度かというのはとても控え目な表現だ。実際は週1~2回あった。しかも、自分とは名乗らなかったし……。

ホント、優しいんだよね、刹那さんは。

そう言えば……。

「あの桃の飴は市販されてないみたいですけど……」

「俺の母親の実家で作っているんだ。小さい頃からあれを食べて育った」

昔を思い出したのか刹那さんが懐かしそうに微笑む。

懐かしむ気持ちもわかる。
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