イジワルな旦那様とかりそめ新婚生活
「……私も刹那さんがいい」

ギュッと刹那さんのスーツの袖を左手で掴むと、彼はその手をつかんで手に持っていた指輪をはめた。

「 NON REFUNDABLE.返品は受け付けないからな。覚悟しろよ 」

刹那さんが私の目を見て微笑する。

「刹那さんこそ。後でやっぱりやめたって言っても離れませんよ」

私がギュッと刹那さんに抱きつくと、彼は優しく抱き締めてくれた。

どれくらい抱き合っていたのだろう?

黄色い光がいくつか空中を舞っていた。

「あっ、蛍……」

私が呟くと、刹那さんは私の顎をつかんでフッと微笑する。

「蛍が俺達の結婚の証人だ」

まるで蛍が刹那さんの言葉に返事をするかのように私達の周りを飛び交う。

幻想的な光景の中、刹那さんは私に顔を近づけそっとキスをした。

温かいその唇に、刹那さんの元に帰ってきたんだと実感する。
< 259 / 288 >

この作品をシェア

pagetop