イジワルな旦那様とかりそめ新婚生活
「愛してる、桜子」

刹那さんが私の耳元で囁く。

その口調があまりに優しくて目頭が熱くなった。

「……私も」

涙が込み上げてきて上手く言葉に出来なかったが、刹那さんは私の言葉に満面の笑みを浮かべた。

やがて蛍の光が見えなくなると、私達は客室へ向かった。

今日宿泊する部屋は前回よりも広いロイヤルスイートで、部屋のテーブルの上には婚姻届とペンと革の装丁の本が三冊置いてあった。

テーブルに近づいてよくよくペンを見てみると、それは私がプレゼントしたもの。

「まだ持っててくれたんだ」

嬉しくてジーンと胸が熱くなる。

それに……この本……。

「オースティンの『高慢と偏見』の初版~!」

叫ぶと同時に目がキラキラと輝く。

これって、久世さんが前見せてくれたオークションのカタログに載ってた奴じゃない?

本に頬ずりしたいのをグッと堪える。
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