イジワルな旦那様とかりそめ新婚生活
「血は出てないし。痛みもあまりない。気にするな。だが、ここで寝るのは感心しないな。男子に襲われても文句は言えない。早く講堂に戻った方がいい」

「はあ……」

気の抜けた返事。俺の言った事をいまいち理解していないのだろう。

無自覚……そんな言葉が頭に浮かんだ。

「本当にすみませんでした!」

彼女はペコリともう一度頭を下げると、俺の前から逃げるように姿を消した。

それが 、彼女との初めての出会いだった。

今思えば、運命的な出会いだったのかもしれない。

恐らく、彼女は寝ぼけていたしこの日の事は覚えていないだろう。

彼女があの梅園薫子の妹と知ったのは、次の日の事。

秋人と一緒に廊下を歩いていると、桜子とすれ違い秋人が呟いた。

「今すれ違ったの、梅園薫子の妹だってさ。可愛いな」

秋人が目を細めながらにっこり微笑む。
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