落ちる恋あれば拾う恋だってある

「あ、ごめん……膝も怪我してたんだよね」

スカートを軽くめくり左膝を出すと伝線したストッキングにうっすら血が滲み赤くなっている。

「こっちも消毒しよう。膝立てて」

私はストッキングを脱いで椎名さんに向けて膝を突き出す。椎名さんが腕と同じように消毒をして絆創膏を貼った。

「…………」

「椎名さん?」

私の膝を見つめたまま無言になった椎名さんに声をかける。
すると椎名さんは屈んで私の膝に唇を優しく触れさせる。

「っ……」

突然の行動に驚いたのと、傷が押されたことによる痛みで息を呑んだ。

「椎名さん……何してるんですか?」

「この傷見たらなんかキスしたくなって」

椎名さんは屈んだまま上目遣いに私を見つめる。

「夏帆ちゃんに怪我させてごめん」

「椎名さんが謝る必要ないです」

「俺がちゃんと守れてたらこんなことにならなかった」

「それは違います!」

椎名さんは私のそばに居て支えて守ってくれた。この怪我は宇佐見さんが想像以上に様子がおかしかったせいだ。誰にもどうにもできなかった。

「ありがとうございました。守ってくれて……」

宇佐見さんから遠ざけようとしてくれた。

「大したことできてなかったよ。怪我したし、ちょっとかっこ悪かったかな」

「そんなことないです! すごくかっこよかったです……」

自分で言って照れてしまい、目の前に座る椎名さんの顔が見れなくなってしまった。
下を向く私の顔に椎名さんの手が添えられた。そのまま顔が近づいてくるのが分かったけれど、もう抵抗する理由もない。何度も触れる寸前だった唇が初めて私の唇と重なった。

「俺のものになる気になった?」

唇が離れても椎名さんの手と体は私から離れようとしなかった。

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