どうぞ、ここで恋に落ちて

24.彼は私のスーパーヒーロー






樋泉さんのお部屋は相変わらずすっきり片付いてはいる。

それでも私が来る度に貸した本が増えたり、私専用の部屋着を用意してくれたり、いつの間にかかわいい水玉オレンジのスリッパが置いてあったりと、なんだか物が増えていってしまう。

樋泉さんは「殺風景な部屋に生活感が出てきて楽しい」と言うけれど、本当にいいのだろうか。

そうは思いつつもちゃっかりお風呂を借りて樋泉さんセレクトの部屋着を身につけ、ふたりで冷製パスタを作った。

夕食を済ませて洗い物をし、樋泉さんがシャワーを浴びる間はいつも携帯している本を読みながらくつろぐ。


「古都、ちょっとおいで」


お風呂から上がった樋泉さんに「話がある」と呼ばれ、寝室へ行き、彼に導かれてベッドの上に座った。

樋泉さんは壁一面の本棚から一冊の本を抜き取る。

それとチェストの上の小さな紙袋を手に、私の隣にドサッと腰を下ろした。


「これは、古都が俺に好きだって教えてくれた本」


そう言ってふたりの間に置いたのは、樋泉さんの本棚にあった『砂糖とスパイス』だ。

初めてここを訪れたとき、彼の本棚にそれが置いてあることを知って嬉しかった。
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