シンデレラに恋のカクテル・マジック
 下着が乱れていないことからも、彼の言葉を信じていいようだ。ホッとしたのも束の間、永輝がフライ返しを放り出してベッドに上がり、座ったままの菜々の両手に自分の両手を重ねた。

「でも、今、同意をもらったよな?」

 そう言って端正な顔を傾けて近づいてくる。

「あ、あ、ああああ、あのっ」

 彼の顔を押しのけたいけれど、両手を押さえられていては身動きが取れない。彼の唇から逃れようと勢いよくのけぞったら、後頭部を壁にゴンッとぶつけてしまった。

「いったっ……」

 あまりに派手な音に永輝の動きが止まった。そうして痛みのあまり涙目になっている菜々をまじまじと見つめる。その隙を逃すまいと、菜々は必死で口を動かした。

「あの、あのあのっ、私っ、同意をしたわけじゃないんですっ!」

 永輝が黙って首を傾げたまま菜々を見る。

「私、夢の中でベーコンを食べてたんですっ。そうしたら、ベーコンが口から逃げ出して……だからつかまえて食べたら、どういうわけか永輝さんの、く、く、唇を食べていたっていうか……」

 しどろもどろになりながら説明する菜々の目の前に、永輝がタオルケットを持ち上げた。
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