ひねくれ作家様の偏愛
脳の奥でわんわんと耳鳴りに似た共鳴がする。

それでもいいや。
どこかで誰かが言う。

それでも、いい。
それでも、私は海東智が好き。
恋や愛ではない次元で、素晴らしい作品を生み出す彼に惹かれている。

作品を?彼を?
そんなことはどうでもいい。考えなくていい。
どうしようもなく、惹かれている。
それだけが事実。


『いいよ』


私は虚ろな声で答えた。


『いいよ。参考になるかわからないけど』


『……さすが、桜庭さん。あんたが担当でよかったですよ』


海東くんがはっきりと嘲笑を浮かべて言った。


『明日の夜、泊まるつもりできてください』


言い切ると海東くんはさっさと背を向け仕事に戻る
私は何も答えず、彼の部屋を出た。

あれは、今から4年以上前のこと。
彼は20歳になったばかり、私は24歳に数ヶ月足りなかった。





< 101 / 274 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop