ひねくれ作家様の偏愛


*****



この前もめて、彼の部屋を後にしてから、海東くんと連絡をとっていない。

原稿はメール添付で届いた。
私の拒絶に彼が折れたかたちだ。

再び金曜に打ち合わせと指定されたけれど、行く気はない。
その旨はメールを返信してある。


彼の送ってきた原稿を読んだ。
荒唐無稽なSF小説。

私は彼の創るもののファンだ。
純粋にバカになれるファンだ。

しかし、そんな私にも彼の作品の劣化が感じられた。


以前の作品にはあった強すぎる主張も個性もぼけていた。
主題もブレ、キャラクターは少年誌で見かけそうなよくあるもの。

本来の海東智は違う。

堕ちてなお、彼の作品が美しかったことを私は覚えている。

彼の作品はひとりよがりではない。テクニックに溺れていない。
ナルシズムにも浸っていない。
写実的で、世界観に忠実だ。
繊細で驚きに満ち、感動や涙を心の淵から溢れさせた。
< 104 / 274 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop