ひねくれ作家様の偏愛
「なんで、そんな何ヶ月も前のたち消えた話をしたわけ?」


異動の話なんて誰にでもすぐに来るけれど、本人の裁量など関係無しに消えるときもあっという間。
実際、半年ほど前、私に異動の話はきていた。
可能なら断るつもりでいたし、あっという間に流れてしまったので、誰かに殊更話したりしなかっただけだ。


「あ。ポシャってたっけ。そっかそっか」


飯田はまったく意に介さず笑う。

私は自身の過剰反応を恥じて、しおらしく座り直す。小さな声で言った。


「なんか……海東先生に悪意ない?」


「悪意ならあるよ。俺、あのガキ嫌いだもん」


飯田はさらりと答える。他人への嫌悪など感じさせない爽やかな笑顔で。


「自分以外みんなバカって顔してるとこ。自分を偉いって信じて疑わないとこ。オワコン野郎なのに、いつまでも大作家きどり。あと、桜庭を独占したくて必死なとこもムカつく。俺にたいして敵対心バリバリだぜ、あのガキ。いい加減、分を弁えてこの業界から去れって思ってるよ」
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