ひねくれ作家様の偏愛
海東くんのところには顔を出そうと思っていた。
でも、それは午後の予定。本人にもそう言ってある。

だめ、それじゃ遅い。一刻も早く会いに行こう。

彼は飯田の言葉を真に受けている。
私が異動になり、自分の担当を外れると思っている。

彼が生き急ぐように数々の作品をあげてくるのは、私の異動前に結果を出そうとしているせいだ。
あるいは、小説の出版が決まれば、私を引きとめられると思っているのかもしれない。

恋愛とは違う。
ただの濃厚な執着。

自分が征服してきた下僕を取り逃がしたくない。

そんな歪んだ想いであれ、間違った認識で無茶を通す理由にはならない。



マンションに着くと、海東くんは休憩していたのか、リビングでダイエットコーラを飲んでいた。
テーブルに栄養補助食品の空がいくつも転がっている。放っておくとこんなものばかり食べている。

海東はくんはアポよりずっと早くやってきた私を見て、少し驚いた顔をした。
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