ひねくれ作家様の偏愛
「偉そうに……。自分の無能を棚に上げて、よく言えるな」


言葉が降ってくるなり、海東くんが私の両肩をつかんだ。

驚きと同時に、ぐっと両足に力を込める。
細身だけど、私よりずっと上背のある海東くんの力は強い。


「結局……桜庭さんも俺のこと、お荷物だと思ってんだろ!」


「海東くん落ち着いて」


「本当のこと言えよ!」


海東くんがとうとう怒鳴った。
いつもクールぶっていた彼にはめずらしい感情の爆発だ。


「あんただって思ってんだ。もう使いどころのない廃れたライターだって。終わった野郎だって。わざわざ仕事与えて飼っとくのは、一回ヤッちゃったから、それをバラされたくないだけだろ。マズイもんな、枕営業したって会社にバレたらさ」


海東くんの言葉に一瞬息を飲む。
彼は、自嘲的に唇を引き、乾いた笑い声をあげた。
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